お酒のある生活  

 辛いことや苦しいことがたくさんある毎日を乗り切っていくために、必要なものは何なのでしょうか。その場しのぎの気休めでは、明日もまた同じ職場が待っているわけだし、状況は変わりません。人間関係、なんてことであればなおさらのこと。誰かの助言に勇気づけられたこともたくさんありますが、いつでもそんな「誰か」に期待し、頼り続けるわけにもいきません・・・結局は自分を見つめ直し、克服する以外に道はないのではないでしょうか・・・

メジロ 撮影:syurann-syurann

 ところで、私の楽しみの一つに、ほぼ毎日の晩酌があります。酒とは、ただ美味なだけの液体ではありません。古来飲酒は、神との対話の手段でした。飲酒によって天啓を受け、ある意味日々のよりどころとしていたと考えてもいいのかも知れません。神の死んでしまった現在、私たちは何のために酒を飲んでいるのでしょうか・・・?

 酒を口に含み、舌上を転がし、口内を滲みわたってかけぬけていくかすかな震えを感じたら、ゆっくりと咽へ運んでいく・・・その振動は波紋のように60兆個の細胞へと伝播していき、それぞれのDNAが共鳴しあう。魂は時を駆け・・・宇宙へと還っていく。この一体感、底知れぬ充足感・・・古の記憶が呼び覚まされる・・・

 30分の独酌。このために生きてみませんか?頑張ってみませんか?

 一組の徳利と盃に今の自分の総てを預け、五感を研ぎすませ総動員し、時と対話して得られるものは、必ずやあなたに一筋の光明を導いてくれるでしょう。八方ふさがりの闇の中、震える膝を一歩前に動かすことを躊躇していた自分の小ささ。生きていくことの自然。死んでいくことの自然を感じて。天地間我一人 我より始まる・・・、宮本武蔵のこの言葉を、私もこの頃好きになりはじめました。

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