無地志野盃 銘桜海老 

桃山時代

 この造形の弱い盃を桃山時代とするには異論も多いでしょう。しかしこの柔らかな白い土、入手したときの土臭、深みのある釉薬の白と滲み出るような緋色は桃山の志野陶片と区別がつかず、あえてそうさせて頂きました。もとは小向付か、お供えの仏具だったかも知れないと思っています。

 長石釉の薄いところに緋色が出るが、控えめで自然な感じが好ましい。見込みの底に、丸まった二条の緋色が向かい合うように浮き出ている。酒を入れて軽く揺らすと、何だか水底で二匹の小海老がダンスを踊っているように見え、桜海老と名付けてみました。海老を笑みとよんで、この盃のかわいらしい器形と、ところどころに浮かび出る緋色から、頬を赤らめる童子の笑顔も想起していただけたら嬉しいです。もちろん、ほろよいな彼女でも結構(笑)