ー京都に来たら、これを食べていって下さいね(^^)ー

春・鴨川・葵橋より

 京都で食事というと結構高価だし、なかなか困ってしまいます。期待して友人を連れて名店に入ってみても、冷えきった、油の悪い天ぷらが出てきたり、スーパーで売っているような湯豆腐が出てきたり、がっかりすることも多かったりします。伝統の名の下に安住しているような店も少なくないのです。私なりに美味しかったと思う店を、「ここでしか食べられない!」それでいて「コストパフォーマンスもgood!」という基準から独断で紹介させて頂きます。参考になれば幸いです・・・

<和食>

湯豆腐 蓮月茶や 東山区知恩院北入る:幕末の歌人、太田垣蓮月が一時期この界隈に居を構えていたという記録があり、彼女にちなんでその名前がつけられています(箸袋にも彼女の歌が書かれています)。雰囲気のある店構えで、勿論料理も個室で頂けます。3000円のコース料理は、南禅寺あたりの某有名店よりワンランク上質の内容で楽しめます。メインの湯豆腐の柔らかな口当たりとほのかな大豆の香りもさることながら、かにみそ豆腐のふくよかな甘味が印象に残っています。

いもぼう いもぼう平野屋本店 東山区円山公園内:元禄〜享保年間創業以来十四代に渡り一子相伝で味を伝えてきたという、海老芋と棒鱈を15時間以上炊き合わせた「いもぼう」は、吉川英治、川端康成らにも賞されてきた京の名物料理で、あの料理記者岸朝子さんをはじめ現在でも大変ファンが多いです。いもぼう御膳はこれに何品かのおばんざいが加わって、2500円は納得です。

湯豆腐 豆水楼 三条木屋町:京都と言えば湯豆腐。しかし豆腐好きな父の下で育った私には、どうも京都の水気の多い豆腐は物足りなく感じることも多いのですが、ここの湯豆腐はオーイスィー!です。滋賀県産大豆と天然ニガリによる自家製豆腐は、とろけるような舌触り。大正浪漫漂う店内で、豆本来の甘味と香りを楽しんで下さい。コース3500円はとてもリーズナブル。

皿盛 篠田屋 三条京阪駅前:お店は昭和な雰囲気のお蕎麦やさん、定食やさんといった趣。皿盛とは何ぞや?・・・一見カツカレーなのだが、カレーがなんと!カレーなんばんのカレーなのだ。和風だしとカレーが渾然一体となって奏でるハーモニーに、どこか郷愁をそそられます。ラーメンも有名。

いもねぎ わびすけ 烏丸今出川:和食か洋食か迷いましたが、いもねぎはここの古くからの名物料理で、じゃがいも、ひき肉、タマネギを卵でとじた、オムレツ風の独特のもの。もともと学生たちの栄養を考えた末に生まれたメニューなんだそうです。定食で900円は、学生にはちょっと高めな設定の気がするのですが、塩・胡椒のシンプルな味付けでそれぞれの素材が大変よく生かされた美味しい料理です。わびすけの前身は中井ミルクホールといって、同志社女子大の創立者デントンの支援の下明治35年に創業したんだそうです。趣ある店内の真ん中にはなぜかでっかい金魚(和金)が泳いでいます。

親子丼 岡北 左京区岡崎、京都市動物園そば:外観は一見普通な感じのお蕎麦やさんですが、知る人ぞ知る名店です。私はここのとろっとろの親子丼で、それまでの「親子丼観」が変わりました。だしも効いていますが、しっかりと卵の甘味も感じられます。卵料理は本当に奥が深い!それをとことん感じさせられる親子丼を、あなたも是非。

ざるそば みのり 北白川久保田町:最高の戸隠流手打ち蕎麦が手軽に味わえます。何も京都で信州の蕎麦を食わなくてもという意見もあるかも知れませんが、京都在住関東人の私はほんとにうまい蕎麦が食いたくなるのです!とにかく、美味いんだからオススメなのですっ!

ざるそば 蕎心庵 河原町丸太町南下る西側:先斗町有喜屋の社長が開く有喜蕎心流そば打ち塾塾生の店。そばも専用の花背にあるそば畑から収穫して使っているそうで、噛みしめると甘味が広がります。ざるそば(小)はなんと380円!もちろんわさびから薬味、つゆにいたるまでしっかりしていて、そば湯も美味しいですよ。この価格でちゃんとしたそばが食べられるなんて、感激です(T_T)昼時のみ営業。

<洋食>

卵サンド コロナ 四条木屋町:京都洋食界伝説の料理人、80代のご主人はなお健在です。庶民的な価格で、とにかく美味い!まず何はともあれ卵サンド。卵焼きってこんなに美味かったのか?泣いてください!特厚ふわふわの食感と卵の甘味が、まろやかなマスタードソースと絶妙にマッチしてます。この味で500円は大満足です。カツサンド、ポークカツレツ、オムライスも美味かったなー・・・老練の技にただただ脱帽です。

ハヤシライス グリル小宝 岡崎、京都市動物園そば:特製デミに、丁寧に炒められたタマネギがまた甘味と香ばしさを増して、これが老舗洋食屋さんの味なのだなぁと実感させられました。1000円でこの味わいなら安いと感じます。

ハヤシライス 金平 河原町丸太町東:色の濃い、旨味のとことん凝縮された大人の特製デミがたまりません。一時期ハヤシに目覚めていろいろ食べ歩きましたが、個人的にはここが一押しです。ただしハヤシライスは平日の昼のみのメニュー(1000円)なのが残念。夜はビーフ煮込みやタンシチューなどでこのデミを楽しめますが、さすがに1000円というわけにはいきません。

タンシチュー 星柳 今出川新町:お好み焼きやさんですが、店の看板にもでっかく「タンシチュー」とあるので間違うことはないでしょう。店内は町の定食屋のような雰囲気ですが、味は一流。名物タンシチューはとても濃厚でクリーミー。たっぷり入ったトロトロの牛タンは歯がなくても全然大丈夫でしょう。このグレードで1500 円(ご飯、味噌汁付)は大サービスだと思います。常連が多いのも納得。

インカカレー(シチュー) 森繁 木屋町四条南入る:日本唯一のインカ料理店。カレー(シチュー)も当然、唯一無二の摩訶カレー。一食の価値アリ!そしてインカコーラで乾杯!せっかくだから、コンドルも食べてみる?店主がまたサイコーです。

パキスタンカレー パキスタンカレー 河原町丸太町東:しゃばしゃばしたスパイシーなさっぱりカレー。このカレーも、他店では味わえない独特のカレーです。パキスタンのカレーというのはこういうものなのでしょうか?

幻カレー BAR SION 寺町御池北入る:夜はバーですが、水〜土の11時〜14時限定で、幻の「まぼろしカレー(500円)」が食べられます。スパイシーな手作りカレーで、ほんまにむちゃくちゃうまい!です。3階まで階段を上がらなければいけませんが、十二分に上がる価値あり!激辛好きな方は、「まぼろしのまぼろし」を頼みましょう。「半々」というと、「まぼろし」と「まぼろしのまぼろし」を一皿に半分ずつかけ分けてくれます。

 

<ラーメン>

 京風ラーメンという名前のカップ麺を、昔食べた。あっさりとしたしょうゆ味で、具は蒲鉾だった記憶がある。だが京料理から連想して作られたであろうこんなあっさりラーメンにお目にかかることはまずなく、京都ではしっかりとだしをとった醤油系の味の濃いスープに青みの強い九条ネギがばさっと載ったようなラーメンが主流です。京都に本店のある店以外、全国区の店の支店は避けました。

<銀閣寺に行ったら・・・>

ますたに(北白川、今出川通銀閣寺道バス停前):昔からある京都ラーメンの代表にして、今も行列の人気店。ある意味ひとつの究極で、これ以上手を加えるべきところのない完成されたラーメンだと思います。豚骨、鶏ガラに加え根菜類のうま味の出た深い味わいのスープは、背脂がかかっていてもあっさりしていて、繊細なバランスのとれた香り高い逸品。一味がとてもあう。食べれば食べるほど「やっぱりうまいなー」と毎回思わされております。

天下一品(支店いろいろ):京都発祥、全国区の超こってりどろどろラーメン。ある意味京都ラーメンの代表かも知れませんが、異端でもありましょう。私は好きですが友人は食べられませんでした。本店は北白川(白川通り)にあります。

<京都御所周辺なら・・・>

○竹(まるたけ)(河原町丸太町西、裁判所の裏):醤油系魚だしの個性的なラーメン。とろけるようなチャーシューは一枚ずつ炙られ、香ばしさがプラス。味のしみた煮卵は黄身がとろとろ。コクとキレを両立した綺麗な味は、店主の高度な味覚と技術を感じずにはいられません。食べ進むうちにチャーシューの肉汁がスープに移っていき、また違う美味しさが楽しめます。テーブルの紅酢をかけると更に風味がまします。営業時間中は「只今合戦中」の札が出ています。過去に冬季限定で出ていた、隠し味に(そんな隠れてもいなかったが)アンコウの肝が入った吟醸味噌そばも絶品でした・・・

新進亭(麩屋町二条):マラソンランナーのおじいちゃんが作る白味噌ラーメンはここでしか食べられない個性的な味です。野菜たっぷりで健康的、ボリュームも十分です。店内の雰囲気も家庭的で好感が持てます。キアヌ・リーヴスもわざわざお忍びで食べにきたそうです。

<京大のそばだったら・・・>

新ます(百萬遍交差点北東角入る):ますたにの兄弟店かと思いきや、そうではないそうです。味は正統派京都ラーメン。ラーメンにうるさい方でも自信持って連れていけるお店だと思いますが、店の作りは居酒屋で、夜は暖簾がかけかえられ、「樽八」に店名まで変わります(居酒屋になっても中華そばは食べられるそうです)。

東京ラーメン(左京区吉田牛ノ宮町):東京ラーメンは店名だけで、東京チックなラーメンではなく、鳥ガラ系醤油味で、結構こってりとしています。備前焼人間国宝、金重陶陽似のおじいさんの作る400円のラーメンはどこか懐かしい味がします。ごっつうまい屋台の味、とでもいいますか・・・

山さん(叡電茶山駅徒歩3分):ますたに系の背脂京都ラーメン。少し塩味強めのスープに、葱がめちゃくちゃあいます。冬の夜、どーにも食べたくなるラーメンです。注意:2003年から滋賀守山に移転してしまいました(T_T)守山でも大繁盛されているとのこと・・・守山に行ったら絶対寄りますよ〜ヽ(^_^)ノ

<繁華街でしめの一杯>

ラーメントップ(河原町三条東入る):夜だけ開店の小さな店ですが、あっさり豚コクスープはトップ独特。個人的には三条界隈では最も美味いラーメン屋だと思っています。でも、昼間や夕方にも開店して欲しい(T_T)

とんとん来(四条南座向い):仕事を終えた舞妓さんも食べに来るとか。コクのあるしっかりしたボディの豚骨醤油スープはとんとん来ならではです。豚の旨味がスープにしっかりとうつってます。

<京都駅周辺>

新福菜館(支店いろいろ、本店は塩小路高倉):京都発祥、この店も全国区となりつつありますが、せっかく京都に来たら本店(塩小路高倉、京都駅そば)の味をたしかめていって下さい。さらっとした黒いスープは超塩辛そうですが、食べてみるとそうでもなく、だしの効いた独特の香りです。チャーシューがうまいので、チャーシューめんと、焼きめしがオススメです。

百年屋(京都駅八条口前・アバンティB1F):麺にとことんこだわってつくられているのが食べたら誰でもわかります。スープはあっさり塩味がオススメ。決め手はモンゴル天然塩と名古屋コーチンだそうです。煮卵をトッピングして、お腹空いてたらブタマヨ丼も超オススメ。スープでのばしたマヨネーズソースがチャーシューご飯に絶妙にからみます。丼メインでも行きたいくらいです。京都駅周辺には同じ系列の店が他に二件(上方ざんまい屋:JR京都駅ビル10F京都拉麺小路、麺屋かんじん堂:JR京都駅前地下街ポルタ)あって、また違った感覚のラーメンを楽しめます。

<その他>

いいちょ(東半木町):人気の行列店。これまたスープのしっかりした旨味たっぷりの背脂系京都ラーメンです。少々並んでも後悔させません。

玄屋(京阪伏見桃山駅下車・伏見区役所そば):酒粕ラーメンで有名な店。酒処、伏見ということで強引に作られたラーメンかと思いきや、さにあらず!鶏ガラ、豚骨をベースにしても上品なスープに、酒粕のほのかな甘味がとてもよく調和していました。伏見で酒蔵見学、寺田屋などの幕末の史跡をめぐる旅をするなら、お昼はここで決まり!

<たこ焼>

 たこ焼といえば関西、それも大阪です。でもでも、京都だって負けてませんよ。若干値段が高く感じるかも知れませんが、その分質で勝負だっ!

縁蛸(一乗寺、白川通り沿い):明石蛸のうまみが凝縮した「蛸味」焼。ソースもマヨも一切付けずに、そのままで蛸本来の旨味を堪能してください。他店にはない、ここでしか食べられない味です。蛸好きに是非食べて欲しい!たこめしもおすすめです。

蛸安(北白川別当町バス停前):こちらはオーソドックススタイルのたこ焼き。たこやきが食べたい!そんな気分のときにはココ。ふ〜わふわでだしの効いた生地に、特製ソースとマヨ、それに韓国産の香り高く辛くない唐辛子がとてもあいます。メニューが豊富でびっくりしますが、私にはたこ焼きが一種類あれば十分です。

 

<和菓子・デザート>

抹茶ゼリー 中村藤吉本店 JR宇治駅前:究極の抹茶味の涼菓です。よく冷えた青竹の器に、特製抹茶アイスなどとともにパフェのようなスタイルで出されます。抹茶パフェの有名店は京都にたくさんあって食べ慣れているつもりでも、ここに来るとお茶の風味の素晴らしさと可能性をあらためて再認識させられます。日本人で良かった・・・庭の松の木がまた趣あります。

くずきり 鍵善良房 四条通り八坂神社前:四条通で人気のデザートといえば、茶寮都路里の抹茶パフェがあまりに有名で実際とても美味しいですが、いつも観光客の行列が絶えないこと、先に中村藤吉を体験してしまったらそれほどの感動もないだろうということで割愛させていただきました。ですが、鍵善のくずきりは外せません。葛自体にもしっかりと味があること。仄かにフルーティな独特の黒蜜。あらゆる美味のエッセンスが含まれています。店内入ってすぐの河合寛次郎のやきものや、店名の由来になった蔵の鍵、庭の水琴窟の音色も是非楽しんでいって下さい。

タルトタタン ラ・ヴァチュール 左京区岡崎平安神宮西側:80代の女店主が作るタルトタタン(600円)はリンゴのケーキ。店主の「多くの人に食べて貰いたい」という理由から、二人で行っても一つしか頼めません。煮詰めたリンゴの香りとその濃厚な甘味はまさに巨匠の技、大人の味です。もうひとつ、くるみのタルト(450円)も頼みましょう。キャラメルの香りとナッツの風味が絶妙。五木寛之の小説「燃える秋」で主人公亜希が宿泊するマンションの1Fの店として登場しますが、五木氏自身も好きでよく来ていたそうです。

州濱 植村義次 烏丸丸太町:要予約。葵祭にも供されてきた、鎌倉時代から続く伝統の縁起の良い大豆のお菓子。一口頬ばるだけで、素材がとことん吟味されているのがわかります。お茶類は勿論、ブランデーなどの強い酒にも合います。こちらは店内では食べられませんが、おみやげにオススメです。一本700円。