古唐津皮鯨寄継盃

小森谷窯

桃山〜江戸時代

 

 

 憧れの皮鯨たちぐい、一生に一度でもいいから、皮鯨で飲んで見たい!小山冨士夫旧蔵のものか、田中丸コレクションのものか・・・やはり口縁がぐっと開いて、鉄釉の太い手のもの・・・となると小森谷手か・・・そんな夢を見続けていたら、信じられないような幸運が重なり、この盃と巡り会うことが出来ました。入手時はただパテで継いであるだけのものでした。私の下手な銀直しではどうしても納得行かず、敬愛する修復家の方に頼み込んで、本漆でお願いいたしました。このパテを外すのがまた一苦労、何とか元の陶片に分解し、郵送して待つこと一年とふた月、見事に直ってきたこの子を見たときの感激たるや・・・Kさん、本当に有難うございました。この盃、ボディが口縁まで届いてないじゃないの、それじゃ単に口縁を皮鯨で埋めただけでしょ?なんて悪口を囁くあなた!・・・ちゃんとごけ底の高台の縁に鉄釉のあとがついてるんですヨ!(失笑)・・・このこだわりを共有してくれる方、果たして何人いらっしゃるでしょうか・・・

 皮鯨で酒を飲むという夢が叶ったのも、この盃に関わった方々の御厚意のおかげです。この盃の「寄せ継ぎ」には、そんな意味も込められているような気がして・・・ちゅびっとやるたびに胸が熱くなるのは、お酒のせいだけではないのです・・・。もう一度、この場をお借りして御礼申し上げます。