現川焼 ぐいのみ

十三代横石臥牛作

 共箱。幕張メッセで開かれた「大陶器市」にて。その丁寧な仕事と絵付けの美しさに魅了されました。現川焼きの特徴は刷毛目にあり、この作品はそこに女郎花を描いています。臥牛窯といえば白鷺(コサギ)の絵が有名ですが、白泥を盛りつけて描かれる鷺の質感、迫力素晴らしく、強風吹きすさぶ中眼光を蓄えてじっと佇むような姿は哲学的ですらあります。しかしぐいのみとなると、その小ささ故その鷺の持ち味を発揮できていないように感じ、正反対の趣の可憐なこの盃を選びました。十三代の作品としては他に浅黄色の緑釉のものがあり、何でも娘にまでみどりと名付けているほど、この色にこだわっておられるようです。口縁にほどこされた鉄釉が翡翠のような緑を柔らかく静かに引き締め、これも逸品でした。