鐵緑釉面取碗

河井寛次郎 作

(河井須也子(寛次郎氏長女、河井寛次郎記念館館長) 識箱)

 昭和13-14年頃の、李朝や古民芸の影響を強く感じさせる、寛次郎中期の作品だそうです。作風はあくまで力強く、それでいて繊細。古陶が独自に咀嚼され、新しい作品となって生まれています。そして独特の空気を漂わせる、存在感の強さをもっています。氏の作品は後期から晩年にむかって造形色が更に強まり、作風が前衛的になっていきます。そのとどまるところを知らぬバイタリティーには、ただただ感じ入るばかりです。五条には河井寛次郎記念館として氏の工房と生家がそのまま保存してあり、往年をしのばせます。特に奥の登り窯の第二室に入ると、何か異次元の空間のような、神秘的な空気を感じました。

「全てのものは自分の表現」 河合寛次郎